一月の本部例会で三十一枚目の表彰状を頂きました。
会の仲間の皆様、妻や子供達、その他私に関わった周囲のすべての人々の支えがなければ今日の私はありませんでした。
三十歳そこそこで入会した私の回復の道程は、例会で仲間の皆様が語ってくれた体験談の中に散りばめられた、珠玉のような断酒語録に導かれたものです。
啓発された語録は山ほどありますが、紙面の都合で、深く感銘を受けた言葉を五つだけ紹介させていただきます。
◎アルコール中毒とは実に不思議な病気である。原因が分かっているのに決して完治することはない。
私が入会した時、全断連の理事長で東京断酒の会長も務められていたOさんのこの言葉を聞いた私は、実に簡単に次のように理解してしまいました。「ああそうか。この病気の原因は酒だ。要するに酒をやめれば他の原因不明の難病と違って組みし易いんだ。」
ところが一生懸命断酒を継続していくうちに、この病気はそんな生やさしいものではないということを思い知らされました。
飲まないアル中、つまりドライドランカーのままでは回復は程遠いということも例会で学びました。
◎罪のない子供の笑顔を奪ってまで飲む権利はない。
今も会長としてご活躍の大先輩のSさんの言葉です。物心のついたばかりの可愛い盛りの子供が泥酔して大声を出す私を見る凍てついた表情を思い出し、後悔していた頃に聞いたグサリと胸に刺さった言葉です。
◎飲みたければどうぞお好きなだけお飲みなさい。そしてどうぞ墓場に行ってください。
入会してまだ日が浅く、たびたび飲酒欲求に襲われて精神的に揺れていた頃、しきりに聞かされた今は亡きTさんの名文句です。ギョロリとした目、迫力のある声で真顔で語る話を聞いていると、飲酒欲求がスーッと消えたことを今でも鮮明に思い出します。
◎断酒会の教養とは学問や知識ではない。素直さこそが教養だ。
二十年以上も自宅を開放して東京断酒の事務を黙々とこなされた故Sさんの名言です。
医者や書物から得た知識を受け売りして、例会の中でとくとくとして話していた時期の私にとって穏やかな笑顔で話すSさんのこの言葉は、まさに頂門の一針でした。
◎断酒会の人間関係は、水を張った桶に里芋を入れてかきまわすようなもの。お互いの芋がそれぞれ擦りあって皮が剥けてきれいになる。
これもSさんの有名な言葉です。断酒はできたけれど、仲間との人間関係がうまくいかず会を去っていく人が少なくないのは今も昔も変わりません。
Sさんは人間関係についてさらにこうもいわれました。「会の皆に好かれなくてもいい。そのかわり嫌われるな。」
思い出すとまだまだ素晴らしい言葉は次から次に浮かんできます。そしてこれらの語録は、回復の精神的ステップを順を追って踏んできた私のその時々の心情にピタリと合ったものでした。これらの語録こそがかっての私の悩みを解き放ち、高慢な心を戒め、人間形成への努力を誓わせた尊い贈り物でした。
これからも仲間からの贈り物を求めて、例会回りに励んでまいります。